錦鯉の専門知識講座第5回は「墨」についてです。

「墨」とは、主に昭和三色(以下、昭和)や大正三色(以下、三色(さんけ))における黒色の模様を指します。

昭和や三色の赤、白、黒の模様は「紅」、「墨」、「白地」で構成されます。

良い「墨」を持った錦鯉を作り上げるのは非常に難しいと言われます。

小さい頃の鯉の「墨」と成長した後の「墨」とでは大きく印象が変わるからです。

例として下の写真を見てみましょう。

春、野池に入れる前の三色
秋、野池から池あげした三色

1枚目は野池に入れる前の状態で墨がほとんど出ていないことがわかります。

しかし、2枚目の成長した後の写真を見ると「墨」がバッチリ決まっています。

「墨」は成長するに従って出現してくる場合が多く、将来性を見極めるのが非常に難しいポイントでもあります。

だからこそ「墨」の決まった昭和や三色の価値は極めて高くなるのです。

三色ではしばしば「墨」が消えてしまうこともあります。

三色の場合、「紅」の隙間の「白地」に絶妙に乗った「墨」がその鯉の魅力を引き立たせる大きな要素の一つですが、この絶妙な「墨」が消えてしまう可能性があることも三色の難しさであるとも言えます。

「墨」の出方や質は生育環境(水質や水温など)にも大きく左右されるポイントでもあるため、養鯉場の個性がよく出る部分でもあります。

もちろん親の影響も大きく受けるため、錦鯉を評価する上で非常に奥深くマニアックなポイントです。